脱毛Q&A

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トラブルについて

  1. Q15

    私は皮膚の色は白い方で毛は黒く太いのですが、CoolGlideの東洋人に対する効果を臨床研究済みであるというクリニックに通い始めました。ひざ下は2回目、ひじ下とわきは1回目を終えて1ヶ月半ほど経つ現在、全体に毛の量が減り伸びてきた毛も細くなったと感じています。
    照射時の痛みは想像以上で、特に骨に近い手首や指は麻酔クリーム無しでは耐え難く涙が出る程でした。(出力は確認できませんでした。)
    しかし一番の心配事は、照射後指など一部の血管に血栓ができたり、施療部位がむくむといった症状が出たことです。腕には所々打ち身のような黄色いあざもあります。
    事前にCool Glideの製造元であるAltus社のページで、Vascular lesions(血管拡張症?)の治療にも有効であるといった記述を確認してはいたのですが、脱毛目的の照射でそのような症状が出るとは予想していなかったので大変不安になりました。当のクリニックに相談したところ、血栓は次第に無くなる、次回からは血管を逃しながら照射することで血栓は避けられるということでした。しかしこれまで私のような症状が出た患者は経験がないという説明に依然不安が残り、別の病院の血管外科でエコーの撮影と診察を受けました。結果、手の指の血栓とは別に、片方のふくらはぎに初期の静脈瘤がみつかり(レーザー照射後できたものかは分かりません。)、循環器の専門医の立場からは血栓の心配のあるレーザーによる脱毛は薦められない、という見解でした。
    ---中略---

    そこで先生のご意見をお伺いしたいのですが、ダイオードによる脱毛で血管やリンパ腺に影響を与えたり、静脈瘤を悪化させるといった可能性はありますか?
    (御本人の了解を得て、迷惑のかからないように一部修正しました)
    CoolGlideに限らず、私どもが使っているCoherent社のダイオードもHPのダイオード対決でのPalomar社SLPも、Vascular lesionsの治療承認をFDAから取得しているようです。(Vascular lesionsとは白人女性に多い下肢の表在性の静脈瘤のことで、一般のアメリカ人はleg veinというようです)この治療のターゲットは酸化ヘモグロビン(赤い色素)です。血管の中の赤血球を破壊して血管を潰そうというわけです。

    酸化ヘモグロビンの吸収度のグラフ
    この吸収度の図でわかるように、酸化ヘモグロビンは約600nmよりも短い波長の光をよく吸収し、それより長い波長の吸収率はよくありません。これを利用して毛細血管拡張症などの「赤い病気」には吸収のよい585nmのダイレーザーなどを使うのが一般的です。

    ダイオードやヤグ(正式にはNd:YAG)の波長では「赤」への吸収度は低いですから、なぜVascular lesionsの治療に使うのか私には理解できていません。何回かメーカーから説明を受けたのですが、私の関心度が低いためか(頭が悪いためか)今一つ理解できずにおります。

    理解していないのは私の問題であって、別の病院の専門医がエコー検査をおこなっての診断ですし、「打ち身のような黄色いあざ」というのも静脈が破れて内出血した結果と考えられますから血栓症が発生したことは間違いないでしょう。

    ダイオードでもヤグでも、赤血球にも反応することがあると仮定して(あなたの場合は仮定ではなく現実に反応したのですが)、脱毛する際にそれを避けるにはどうしたらよいのでしょうか?
    Coherent社(現Lumenis社)のLightSheerダイオードもPalomar社のSLPダイオードも冷却装置が組み込まれたハンドピースで皮膚を圧迫しながら照射することの重要性はすでにダイオードレーザーを用いた脱毛の基本手技で述べております。(実際に脱毛する際には「照射漏れ」を防ぐために赤いペンで皮膚に印をつけて、その上から照射していますがペンの部分がヤケドしたという経験はありません)

    照射イメージ
    強く圧迫すればするほど皮膚の中の毛根が横になって皮膚表面に近づき脱毛効果があがるわけです。必要がないとおもって今まで触れませんでしたが、圧迫にはもうひとつメリットがあります。
    圧迫することによって、血管が押しつぶされて赤血球が照射野から排除されるのです。血管そのものにはレーザーに反応する色素がありませんから、貴方が経験したような障害を受けることはないわけです。
    問題はCoolGlideで皮膚を圧迫しながら照射できるかどうかです。

    メーカーのCUTERAホームページに CoolGlideのハンドピースの写真があります。

    ハンドピース写真
    写真はそのHPから拝借したものですが、CoolなハンドピースをGlideさせながら照射する、すなわち接触式の機械のような印象を受けます。しかしながら、接触しているのは冷却装置(B)だけで照射面(A)は非接触式です。レーザー光線が照射される範囲の血管は圧迫されていません。赤血球が充満していますからレーザーに反応することは十分に考えられます。

    最初に示した吸収曲線をもう一度みてください。
    アレキサンドライトでのメラニンの吸収度(M1)と酸化ヘモグロビンの吸収度(H1)を比べると、M1が1000であるのに対してH1は10しかありません。同じようにヤグ(Nd:YAG)をみるとM3とH3は200:20程度の開きしかありません。
    ヤグレーザーではメラニンの吸収度が落ちるために、同じ効果を得るためにはアレキサンドライトの4~5倍の出力が必要であることはレーザー出力で述べました。絶対値は4~5倍の違いがあるにしても、アレキサンドライトではメラニンに反応する強さの100倍の出力で照射しないと赤血球には反応しないけれども、ヤグでは10倍程度で反応するということなのです。(安全域が狭い)
    アレキサンドライトやダイオードの場合には照射漏れを防ぐために赤いペンで皮膚に印をつけて照射しても問題はないけれどもヤグでは危険なのかもしれません。

    今回のトラブルで得た教訓は、皮膚を圧迫せずに照射するタイプの非接触式脱毛機では(あるいは接触式のダイオードであっても圧迫不足であれば)、FDAから治療承認がある機械であるからには血栓をつくる可能性がある、とも言えます。(静脈血栓症はとても恐ろしい病気です。血栓が肺や脳に流されて梗塞が起きることがあります。長時間の飛行機旅行で「エコノミーシート症候群」のために空港についた途端に死亡したというようなニュースもありました)特にそのリスクはヤグレーザーで高いわけです。

    非接触式のヤグレーザーは医療機関よりもエステにたくさん出まわっています。火傷をつくっても一時的な場合がほとんどです。脱毛効果がなくてもお金を損しただけですが血栓症は命にかかわる合併症です。そのような可能性もあるということを経営者やエステシャンは認識していて欲しいとおもいます。
    Q&Aの場を借りて警鐘を鳴らさせていただきます。

    2001年7月17日
    渋谷高橋医院 院長 高橋知之