ヤケドを起こさずに細い毛を脱毛するには冷却装置は必須です。
脱毛用レーザー装置の冷却装置は、大きく分類して2種類あります。
ひとつはアレキサンドライトなどに採用されているもので、レーザーを照射する度に「冷却ガス(空気)」を照射面に吹きつけるタイプです。
もうひとつはCoherent社のダイオード(LightSheer)や一部の光脱毛機に採用されているもので、冷却されたサファイアガラスの塊を皮膚に押しつけるタイプで、レーザー光線はそのガラス塊の中を通過するのです。両者の違いは別文で詳しく説明していますのでそちらを御覧ください。
どちらにしても、冷却と照射は同時におこなわれており、1発照射して次の照射野に移動するまえに、その照射野の冷却は完了するシステムです。
Coherent社のダイオード(LightSheer)の場合は、このガラス面を0.5秒〜1.0秒間隔で皮膚をスライドさせていきます。1秒間隔の場合には、1秒間同じところに留まって1発だけ照射するのです。通常はパルス幅を30ミリ秒に設定しますから、0.03秒だけレーザーが発射されてその間は発熱します。残りの0.97秒は冷却する時間というわけで十分な冷却時間が確保されています。高速モードでは0.03秒の照射に対して0.47秒の冷却時間、すなわち照射時間の15倍〜30倍の時間をかけて冷却しているわけです。
Palomar社のダイオード(SLP1000)の冷却システムも同じようにみえますが、実際は全く異なるシステムです。

SLP1000のハンドピース皮膚接触面です。中央の(B)がレーザー光線の通過するサファイアガラスです。そのガラスを長円形の金属が取り囲んでいます。図の黄色部分が冷却装置です。

処置の流れを説明しましょう。
1.まず、皮膚に押しつけて黄色の面に接触した部分を冷やします。
2.次に、矢印の方向にずらして照射します。Cで冷やされた赤い○の部分にレーザーが照射されるわけです。その時、同時に青の○はCで冷やされます。
3.更に少しずらします。赤い○の部分はAに移動して再度冷やされ、青の○の部分にレーザーが照射されます。
このように、前冷却→照射→後冷却と流れ作業的に処置が進みます。レーザー光線の通過するサファイアガラスも黄色の冷却装置に取り囲まれているので、照射面でも冷却できているはずです。
ところで、このシステムが抱える問題は「照射漏れ」です。上の図の赤く塗りつぶした部分はレーザー光線が当たりますが、灰色の部分には当たりません。「照射漏れ」が起きて、レーザーがよく効くほど、「水玉模様」状態となり、とても見苦しいことが起きてしまいます。「水玉模様」状態を防ぐには重複照射をするしかありません。別文で書いたように重複照射は効率が悪いのですが背に腹はかえられません。問題はヤケドを起こさずに重複照射ができるかどうかです。1発照射するたび毎に、必要な冷却が完了するシステムであれば重複照射をおこなっても、それほど心配はいりません。

1発の照射に対する冷却を前後の照射が分担しているSLPで重複照射のシミュレーションをしてみましょう。赤○と青○が重なった部分(X)に注目してください。
1.まず、皮膚に押しつけて黄色の面に接触した部分を冷やします。
2.次に、矢印の方向にずらして照射します。のCで冷やされた赤い○の部分が照射されるわけです。(X)にも当然ながら照射されます。ここまでは問題ありません。
3.更に少しずらします。赤い○の部分の(X)を除いた部分はAに移動して再度冷やされ、青の○の部分が照射されます。問題は(X)の部分で、冷却されずに重複照射されてしまいます。前冷却→照射→後冷却と順番に流れていくように設計された装置で、必要な後冷却がなされないまま再度照射されるのは問題といえるのではないでしょうか。後冷却されずに直ちに再照射されるとヤケドが起きやすいとおもうのです。

写真はSLPで、高出力(パルス幅750ミリ秒・60ジュール)で重複照射したために起きたヤケドです。詳細はこちらを御覧ください。
実際の照射はPalomar社の副社長であるBrody氏自らがおこないましたので照射テクニックには問題ありません。1発の照射でハンドピースを1秒ほど皮膚に押しつけ、そして少しずらせて次の1秒に移っていきました。すなわち、0.75秒間レーザー光線がでていて、0.25秒間あけて次の照射に移ったわけです。サファイアガラスの部分(B)でも冷却される設計なのですが、照射中は熱を発生するので冷却効果を期待できません。冷却を期待できるの0.25秒間だけだったのです。
SLPで設定できる最も短いパルス幅は50ミリ秒です。50ミリ秒に設定すると、サファイアガラスの部分(B)での冷却時間は0.95秒を確保できるので重複照射しても(LightSheerと同じように)ヤケドする危険性は少なくなるとおもいます。
「照射漏れ」を防ぐために重複照射するのであれば、できるだけ短いパルス幅で設定する必要があるのかもしれません。
まとめてみます。
「ダイオード対決」の1回目の照射時の説明では、「SLPは200〜400ミリ秒の間で設定します。500ミリ秒以上で使用することはありません」ということで、パルス幅を400ミリ秒に設定しました。結果は、ヤケドは起きなかったものの効果はゼロでした。「新型機なのでもっと長く設定します。750ミリ秒が最適です」と説明がかわり2回目の照射をおこない、その結果、御覧のようなヤケドが発生しました。
表現を変えてみます。この例ではSLPの最大出力である90ワット設定で、重複照射される部位に関して、
1回目は0.4秒照射し0.6秒冷却してヤケドは起きませんでした。
2回目は0.75秒照射し0.25秒冷却してヤケドしました。
一方、LightSheerでは装置の最大出力である2900ワット(SLPの32倍!!)設定で、
0.03秒照射し、0.47秒冷却してヤケドは起きませんでした。
10ミリ秒以下の短いパルス幅では危険であることは別文で述べました。10ミリ秒を下まわらない範囲で短時間に高いエネルギーを与えて、残りの時間を冷却に用いるというのが、ヤケドを起こさないコツではないかと私は考えます。
2001年2月20日
渋谷高橋医院院長
高橋知之記
上記記載を知らせるのがエチケットと考えてPalomar側に示したところ、内容に同意できないとの簡単なメールをいただきました。不同意の理由を問合わせておりますので回答が届きましたら掲示いたします。
もちろん、これはあくまで私的意見ではありますが、異論・反論がありましたら、どなたでもメールをお寄せください。改変せずに掲載させていただきますし、私が間違っていることが納得できましたら訂正いたします。
2001年2月25日
渋谷高橋医院院長
高橋知之記