肝斑(かんぱん) -光美顔で気をつけなければいけない色素沈着-


フォトフェイシャルなどの光美顔術は効果の発現はマイルドですが施術直後から化粧もできて日常生活に支障がないということで、シミやクスミなどの色素沈着の改善の一手段として普及しています。
対象となる色素沈着はソバカスや老人性色素斑で、皮膚の浅いところにあるほど効果が大です。しかし同じ色素沈着である肝斑は、フォトフェイシャルが開発される以前よりレーザーなどの治療対象外とされており、治療してはいけない禁忌と考える専門家がたくさんいました。
フォトフェイシャルが普及しだした最初の頃には、このことがよく判っていなくて施術すればするほど悪化する例がたくさん起きて問題になりました。

現在の専門家の意見は二つに分かれています。かならず悪化するので絶対に行なってはいけないという意見と、慎重に行なえばという条件つきでフォトフェイ シャルは肝斑にも有効であるという二つの異なる意見です。フォトフェイシャルも有効であるとする後者の立場であっても不用意に行なえば悪化するということ に異論はありません。

「慎重に行なえばという条件」を説明します。

フォトフェイシャルで一般に用いられているハンドピースは560ナノメートル以下の波長をカットするフィルターがついたものです。
フォトフェイシャルの目的はメラニン色素をターゲットとするシミやクスミの改善とヘモグロビンをターゲットとする赤味の改善です。ヘモグロビンへのエネルギー吸収のピークは580ナノメートル前後ですから、その附近をカバーしたカットフィルターでなければならないのです。
一方、カットする波長が短い(数値が少ない)ほどエネルギーは皮膚の表層に捕われますので、560ナノメートルの光線は640ナノメートルの光線よりも、 近づけて照射した場合には、身体が受けるエネルギー量は多くなります。このような過剰なエネルギーが肝斑を悪化させるのではないかと考えられています。
640ナノメートル以下をカットすればヘモグロビンへの吸収がありませんので赤味には効果がありませんが、皮膚の比較的深いところまでエネルギーが届きますので、すなわち皮膚全体に作用しますので、560のフィルターよりもマイルドです。
フォトフェイシャルは肝斑にも有効であるという立場の専門家はこの640ナノメートルのハンドピースを使って慎重に低出力で施術しているのです。そうでなければ肝斑は悪化するとも説明しており、私はこれらの見解にまったくの同意であります。

この写真は550ナノメートル以下をカットするフィルターを用いたコスモライトの美顔モードで行われた光治療の前後です。
上側が施術前、下側は2回目施術から1月半後です。2回の施術後にはカサブタ状にはならなかったものの、かなり赤くなったそうです。そして、施術から1月くらいしてだんだんと黒くなってきたそうです。

こちらも同じくコスモライトで1回だけ施術を受けた人です。
肝斑に対して使用してはいけない550ナノメートルの光線で施術照射したからこのようなトラブルが起きたわけです。
肝斑の部位だけ脱毛用の600ナノメートルのハンドピースを使えばトラブルが起きなかったかもしれません。(ただ、光線の持続時間の設定が脱毛と美顔では異なりますので、プログラムの修正が必要となります)
このようなトラブルを起す可能性があるからエステで光美顔を行なってはいけないという意見も聞くようになりました。しかし、550ナノメートルで肝斑を施 術すれば私が行なっても同様にトラブルを起すはずですので医師が行なうように規制しても意味はありません。メーカーが肝斑専用のプログラムを機械に組み込 むよう努力することが大切なのです。そのような方向に向かって欲しいものです

こちらは渋谷高橋医院でのP-NAINの例ですが、頬の部分だけは640のフィルターを使って、他の部位は560を使いました。右は2回施術後3週間目ですが、シミの範囲が狭くなって色調も改善したそうです。
トラブルを避けるには施術前に肝斑でないことを確認する必要があるのですが、現実には肝斑と他の色素沈着が混在していることが多くて難しいことが多いで す。悪化したので術前写真を見直したところ肝斑に気づいたということは専門家でも少なくはありません。ですから危うきに近寄らずということで光美顔治療を 敬遠する医師も多いのです。

フォ トフェイシャルの場合は560ナノメートルと640ナノメートルのハンドピースを交換することによって波長を変えますが、ハンドピースの交換には10分程 度の面倒な作業が必要になります。私(Dr.高橋)の目指すところはピアスであっても脱毛や美顔であってもシステムの標準化です。肝斑か肝斑でないかの判 断が必要でない施術システムを構築しようと工夫してきました。

P-NAINではハンドピースを交換するのではなく、560ナノメートルのハンドピースの上に640ナノメートルのフィルターを被せるだけですので作業は数秒で済みます。誰でも簡単にできることが標準化で、そうすればトラブルも回避できるというものです。

なお、肝斑はトレチノイン酸やトラネキサム酸などの外用や内服治療を併用すると奏効する場合もあります。

2004年11月11日
渋谷高橋医院 院長
高橋知之




肝斑[カンハン]

【英】moth patches, melasma

【独】Leberfleck

【仏】tache hepatique

【ラ】chloasma

主として思春期以後の女子の顔面,とくに額部,眉毛直上,頬,頬骨部に左右対称性に好発.限局性の境界明らかな褐色斑.組織学的には表皮細胞のメラニン*含量が増加.妊娠時の卵胞ホルモン,MSH*(メラニン細胞刺激ホルモン)の増加など,内分泌変調が基礎にあるといわれ,日光により増強する.妊娠で生じるもの(妊娠性肝斑*),子宮,卵巣疾患があって発症するもの(子宮肝斑chloasma uterinum),癌の末期に生ずるもの(悪液質肝斑chloasma cachexia)などもあり,また経口避妊薬連用によっても生ずる.


そばかす[ソバカス]

【英】ephelides

【独】Sommerspros

【仏】ephelides

【ラ】ephelides

《同義語》雀卵斑

主として顔面,とくに両頬中央部から鼻背にかけて発生するが,前腕,手背,肩,上背部など,日光照射を受けやすい部位にも生ずる.皮疹は褐色の粟粒大から小豆大の散在性色素斑で5~6 歳に始まり思春期に顕著となる.30歳以降に消退傾向を示すこともある.白人,とくに赤毛または金髪を有するものに多い.遺伝傾向があり同一家族内に多発 する.日光照射により濃色化し数も増し,夏季に目だつようになり「夏日斑」とも呼ばれる.単純性黒子と異なり,母斑細胞性母斑とならない.

 

老人性色素斑[ロウジンセイシキソハン]

【英】senile pigment freckle

【独】senile Pigmentflecke

【ラ】lentigo senilis

《同義語》老人斑,老人性黒子

中年以後に出現し,褐色,黒褐色の境界明瞭な類円形の色素斑pigmental spotで,手背,顔面などの露出部位に好発する.病理組織学的には,色素増殖型,黒子型,色素失調型に区別される.老人性疣贅*を合併することが多い.老人性色素斑は良性のものであり,悪性黒子lentigo malignaとは区別される.

 

[株式会社南山堂 南山堂医学大辞典第18版]


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