皮膚接触冷却装置つきダイオードレーザー(LightSheer)を用いた脱毛の基本手技

基本中の基本

このダイオードレーザー装置はハンドピースを皮膚に押しつけて接触しますので、 燃焼した毛のカスを照射口から除去する必要があります。 除去を怠るとカスにエネルギーが溜まりヤケドを起こすこともあります。

機械を起ち上げると

という標示がでて「OK」と押さないと先に進みません。

「頻回にチップ(=照射口)を拭く」、これは基本中の基本なのですが、つい忘れてしまう落とし穴です。渋谷高橋医院でも導入直後は忘れがちで時々(軽度ですが)ヤケドが発生しました。照射中はチップを拭くためのテッシュ箱を離さないように習慣づける必要があります。
ハンドピースを皮膚から離して照射するアレキサンドライトレーザーではこのような繁雑な操作を必要としませんから、低出力で照射するのなら(痛みは我慢してもらうとして)アレキサンドライトの方が照射する側としては遥かに楽です。(この装置は受ける側は、痛みが少なく、効果が高く、副作用の少ない機械ですが、照射する側には負担を強いるのです)


単発照射(PlacingProcedure)

この装置は照射口が四角であるために照射漏れや重複照射が起きません。そして、照射口のガラス自体が冷媒で冷やされています。その照射口を下のように皮膚に強く押しつけて、1発1発丁寧に照射していくのが基本です。



レーザー脱毛は、 1)毛を剃る。
2)ジェルを塗る。
3)レーザーを照射する。
4)冷やす。
5)ケース・バイ・ケースですが、ヤケド予防にステロイド含有軟膏を塗る。
という手順でおこなうのですが、2)と3)をムービーで御覧ください。
こちらをどうぞ。

連続照射(SlidingProcedure)

「単発照射」はどのような初心者でも安全確実に処置できる基本手技です。ワキのような狭い範囲には問題ないのですが、足全体・背中全体などの広範囲を処置するのは大変です。
この装置は連続照射モードが選べます。引き金を引き続けている間は、1秒ごとに1発とか2発とかいったように一定間隔で自動的にレーザーが照射されるのです。自動照射に合わせて照射口を一定の速度で移動させていけばよいのです。
簡単そうに感じられるかもしれませんが、単にスライドさせればよいのではありません。
これはある人と交わしたメールの一部です、御覧ください。
また、実際に圧迫しすぎての好ましいトラブルも起きています。

このように圧迫不足で隙間があいてしまうとヤケドしてしまいます。 スライドさせながら照射にタイミングを合わせて圧迫する必要があるのです。 こちらのムービーを御覧ください。
この機械を導入した当初は、圧迫の重用性をそれほど強く認識していませんでした。弁解がましいようですがメーカーのマニュアルにも、そのことは詳しく書かれてはいなかったのです。当時、得意げに撮ったムービーがホームページに残っています。削除しようか迷ったのですが、反省を込めてそのままにしておきますのでこちらを御覧ください。ジェルをつけずに単に並行移動しているだけです。幸いトラブルは起きなかったですが出力次第では起きたとおもいます。
強く圧迫するとによってヤケドを防ぐことができるわけですが、圧迫すると脱毛効果も高くなります。
レーザー光線は皮膚にはいると著しく減衰します。成長期の長い毛根では毛包の底は相当に深いですから毛乳頭までレーザーが届かないこともあるわけです。

このように強く圧迫すると立っていた毛根が寝ますから照射口と毛根の距離が近づき効果的な脱毛ができるというメリットもあるのです。(非接触式照射のアレキサンドライトでは不可能です)


ジェルの重要性

別項でも書いていますがダイオードレーザーであってもジェルは必須です。気をつけていても隙間があくことはありうることです。ヒジ・ヒザ・アゴなどの凹凸が激しく皮下脂肪の乏しい部位ではとくに気をつけなければなりません。このムービーは照射口をヒザにあてて押したり引いたりしたものです。「隙間」の変化に注目してください。
隙間にジェルが介在していれば熱はジェルに吸収されますから、ヤケドが起きたとしても軽症で済むはずです。

この人は26ジュールで照射して5日目です。規則正しい点状のヤケドが見られます。ジェルを使ったにもかかわらず起きてしまいました。圧迫不足というか照射面が皮膚に対して傾斜していたのだとおもいます。写真では深刻そうに見えますが、実は軽症で、1ヵ月以内に完全に消失します。開き直るわけではありませんが、ジェルを使わなかったらもっとひどい状態になったはずです。
(このような合併症は月に1人くらいの頻度で発生しています。毎月1000人以上を処置していますから、0.1%以下ということになります。医学の世界では、どのような治療でも、0.1%以下の副作用というのはとてもすばらしい数字なのです。理解してください)

結局のところ、ダイオードレーザー装置を操作する人が守らなければならない基本的事項は三つです。
照射口を頻回に拭く、照射口が皮膚から離れないように強く押しつける、照射口が皮膚から離れたときのヤケド予防にジェルをたっぷりとつける、です。足の脱毛などでは数時間に及ぶ照射になることもあります。長時間の照射で、この3項目を守るには照射時の姿勢が大切になります。

おすふくジェル
他社の機械に慣れた人にコヒレント社のダイオードを操作させると殆どの人は左のような姿勢をとります。まったくの新人でも同様です。そうすると、照射口が皮膚から浮きやすくヤケドを起こしやすくなります。また、ハンドピースを的確に移動できずに照射もれを起こしやすくなります。
コヒレント社のダイオードの欠点はハンドピースが大きくて重いことと言われています。私も最初はそのように考えておりましたが、今は重いことは欠点ではなく長所であると考えております。 右のようにハンドピースの背中に片手を置いて前かがみになって処置をするのです。ハンドピースの重量が加わって、僅かな力で強い圧迫が得られます。
このように操作するとハンドピースの重さが苦になりません。また、操作中は照射口を拭くためのテッシュを離してはいけません。
押して、拭いて、ジェルをつける。
「これぞ、安全脱毛の極意だ」とスタッフに言いつづけている昨今です。


もうひとつのダイオードレーザー装置

説明してきましたダイオードレーザー装置はハーバード大学のアンダーソン博士が理論提供し、コヒレント社が製造しているものです。2000年にはいって同じく理論提供を受けたパロマー社が「SLP1000」というダイオードレーザー装置の販売をはじめました。同じ理論から造られた接触冷却式で、いわば兄弟機です。 機械本体はコンパクトでハンドピースはとても小さく軽量でアレキサンドライトレーザー並みです。 レーザー光線は同じでハンドピースが軽くて小さい、それでいて接触冷却式なのですからダイオードレーザーにも第2世代誕生なのかと感激しました。実物を確認してから導入しようと学会展示で拝見しました。実際に私の腕に連続して数発ほど照射してもらったところ、やはり痛くありません。そこで、ハンドピースの使い勝手を確かめたくて自分で操作してみました。ところが自分で照射すると痛いのです。どうやらハンドピースの操作にコツがあるとわかりました。
この装置の皮膚接触部は、15ミリX45ミリくらいの面積があり、その中心部に直径10ミリの円形ガラスが埋めこまれていて、そのガラスからレーザー光線がでてくる仕組みです。(円形だと照射漏れや重複照射が起きがちです)
ガラス自体は冷却されておらずホームページ写真で「PREORPOSTCOOLING」と書かれた両サイドの部分が冷却されているのです。このハンドピースを一定の速度でスライドさせていくと、まず片サイドの冷却部で皮膚を冷やします。そのままハンドピースをスライドさせると冷やした部分にガラス面が移動してレーザーを照射します。更にスライドさせると照射した部分はもう片方の冷却部に移動します。すなわち、照射時に冷却しているのではなく照射の前後に冷却するのです。
ということは、一直線に定速でスライド照射するときのみ冷却でき、1発1発丁寧に照射していく基本的な単発照射ができないのです。上手なベテランがフトモモなどの広くて起伏のない場所を処置するのには便利かもしれませんが、長軸方向の45ミリが真っ平らな場所というのはそれほど多くはありません。顔(特にアゴ)、ヒジやヒザ周囲は不可能だとおもいます。
長軸方向の45ミリ
このハンドピースは広面積のXCという新型です。照射ガラスを支えるフレームを含めて20ミリ角の接触部ですが、このように場所によっては密着できません。
長すぎると小回りが効かない
長すぎると小回りが効かなくなって狭い路地裏や凸凹道は走りづらいのと同じではないでしょうか。
コヒレント社の製品のように照射ガラスそのものに冷却装置を組み込むというのは技術的に難しいのかどうかはわかりませんが、これほどコンパクト化できるのですから不可能ではないとおもいます。それまで待つことにしました。

2000年10月29日


もうひとつのダイオードレーザー装置」はハーバード大学のアンダーソン博士が理論提供し・・・、と書きました。
「SLP1000」の開発にたずさわった医師
アンダーソン博士の研究グループの一員で「SLP1000」の開発にたずさわった医師が来日し、本日その講演を聞く機会を得ました。実際に機械を操作しながら、1時間ほども私の疑問に答えてくださいました。
その結果、機械の出力に関する私の理解が間違っていることがわかりました。私が使っているコヒレント社のダイオード装置は普及機で40ジュールまで、上級機では60ジュールという強さまで出力を上げることができます。 それに対して、「SLP1000」の性能表では、最高出力が100ジュールまでと書かれています。こんなにコンパクトで、もっと高出力というのもすばらしいとおもっていました。
私は照射持続時間が短くても長くても最高出力は100ジュールだと理解していたのです。ところが実際は1発の照射持続時間が1000ミリ秒(=1秒)という設定のときにのみ100ジュールになるというのです。私は通常は1発30ミリ秒で、色黒の人には100ミリ秒で照射しています。照射持続時間が長くなれば皮膚のヤケドが少なくなるのですが、細い毛に反応しなくなるからです。「SLP1000」では最も短い照射持続時間は50ミリ秒です。細い毛にも効果を求めるならば50ミリ秒に設定して照射しなければいけないのですが、この機械では最高出力は5.7ジュールしかだせないのです。私の経験では、どのような毛であっても13ジュール以下では脱毛できません。コヒレント社のダイオード装置では最低出力は10ジュールです。9ジュールに設定しようとしても、無意味であるとして、機械が受けつけてくれないのです。私の単純計算では総合的に判断して10分の1程度のパワーしかだせないことになります。
「いくらなんでも、ちょっと弱すぎないですか?」との私の質問に、「たしかに弱いと感じることもあります。現在、高出力に改良していますので、お待ちください」と回答してくださいました。
早く導入したかったのですが、開発者本人からそのようにアドバイスをいただいたので、やはりもう少し待つことにしました。

2000年11月10日


私の「SLP1000」に対する関心を伝え聞いて、なんとパロマー社の副社長(MrBrody)が渋谷高橋医院まで出向いて補足説明をしてくださいました。
パロマー社の副社長(Mr Brody) (2000/11/18)
話を要約すると、
この機械は黒人や色の濃いアジア人がヤケドを起こさないで脱毛するために開発したもので太い毛にのみ効果がある。色黒であろうと色白であろうと細い毛、特に産毛には無効である。機械の出力を上げたからといって解決するものではない。そのような毛に対しては、パロマー社では脱毛用ルビーレーザーがあるので、それを薦める。 ということでした。
どうも、これ1台あればどのような人にでも対応できるのではないようです。
脱毛の原理をふまえて、もう一度整理してみましょう。
皮膚から飛びだしている毛を「毛幹」、皮膚の中にある毛を「毛根」といいます。毛根は毛包という袋の中にはいっています。
毛は休止期、成長期、退行期というサイクルを繰り返しています。新しい毛は、抜け落ちて休止期にある毛包の壁にある「幹細胞」から発生してきます。
この、毛包にある幹細胞を熱変性(蛋白凝固)させれば毛の再生は起こらず、永久的に無毛状態が維持できるわけです。
黒い色をしたメラニン色素に収束する波長のレーザー光線があります。
十分な量のレーザー光線を毛根に照射すると、毛根が爆発的に燃焼します。その燃焼の余波で隣にある毛包の幹細胞を熱変性させるのがレーザー脱毛です。
高出力であっても時間が短いと毛根は燃えません。低出力で長時間照射すればトータルの熱量は十分ですが毛根は、やはり燃えません。(生卵をぐらぐら沸騰している湯の中に1秒漬けてもゆで卵にはなりません。40度の湯に何日漬けてもゆで卵にはなりません。これがレーザー脱毛の原理で、専門家は「熱緩和時間(TRT=ThermalRelaxationTime)」理論と呼んでいます。私は「生卵ゆで上がり時間(TRT=TreatingRaweggTime)」理論と呼んでいます。産毛では短い照射時間で済みますが、太い毛では長い照射時間が必要です。一般的には1000分の10~50秒が適当とされています。もちろん高出力で長時間照射してもよいのですが、できるかどうかは機械の性能次第です。機械に十分なパワーがあれば可能でしょう。(照射時間が1000分の3秒の脱毛機では、うずらの卵はゆであがるかもしれませんが鶏の卵は無理な場合もあるということです)
メラニン色素は毛根だけでなく皮膚全体に広く散在していますから、特に色黒の人にはヤケドが起きる可能性が高くなります。皮膚に散在するメラニンは毛根のような塊ではありません。ひとつひとつのメラニンが小さいということは単位体積あたりの表面積が大きいということです。ある程度の時間をかけて照射すれば、個々の小さなメラニン顆粒は外部に熱を放散して燃えないけれども、塊のメラニンは放熱できずに燃えてしまいます。これもTRT理論の一部です。
照射時間を長くすると色黒の人も安全に脱毛できるわけです。しかし毛根が燃えるに足るエネルギーを持続してだせるパワーがあってのことです。私が使用しているコヒレント社製のダイオードレーザー装置は1600ワットのパワーがあります。色黒の人にも安全に使用できるXCという機械にいたっては2900ワットものパワーがあります。
コンパクトである故に私が期待している「SLP1000」のパワーは僅か90ワットです。このパワーでは産毛には効果が期待できません。ここまで書いてきて、黒人でもヤケドしないというのは単に出力が低いからなのではないかとおもいいたりました。別項でヤグレーザーはメラニンの熱吸収率がアレキサンドライトに比べて4分の1しかないから痛みが少なくトラブルが少ないと書きましたが、それと同じことなのでは・・・。
考えを整理して疑問を解決しようとおもったのですが、更なる疑問がわいてきてしまいました。

コヒレント社のダイオード装置は基本的な操作手順を逸脱しなければ、色の黒い人にも安全に使用できます。産毛に対する脱毛効果もすばらしいものがあります。脱毛処置を受ける側にとってはなんの問題もない機械ですが、処置をする側からすれば、もう少しハンドピースが小さくなれば便利なのは事実です。ですから私はコンパクトな「SLP1000」に期待したのです。
当分は重くて大きなハンドピースで我慢するしかないようです。効果あっての脱毛ですから・・・。

2000年11月25日


その後、パロマー副社長であるBrody氏の御厚意で最新型のSLP1000とコヒレント社のダイオード(LightSheer)の比較照射をさせていただけることになりました。パロマー社から派遣されたスタッフ立ち会いのうえで比較検討するという通常では考えられない好企画の誕生です。こちらを御覧ください。

2000年12月17日


本ページで書いた「押す・拭く・ジェル」という基本手技はライトシェアやSLP1000ばかりでなく、冷却装置を内蔵した接触式の脱毛機に共通する手技です。
2004年に完成した多目的光美顔機P-NAINの操作もこれが基本ですし、P-NAINを使っている渋谷高橋医院をはじめとする関連医院や脱毛・レーザー脱毛の永久保証ドクタータカハシでもスタッフには「押す・拭く・ジェル」と呪文を唱えながら施術するように徹底しています。

2004年12月1日


ライトシェアで「押す・拭く・ジェル」を行なっても、まれにですがヤケドすることがあります。もちろん毛質や肌の色調にあわせて部位ごとに慎重なテストを行なったうえでヤケドすることがあるのです。
今回やっとその理由がわかりました。こちらを御覧ください。ゆっくりと丁寧に「押す・拭く・ジェル」を行なうことが大切だということです。


2005年10月26日
渋谷高橋医院院長高橋知之
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