レーザー脱毛あるいは光脱毛によるヤケドの後遺症 -色素沈着と色素脱出-

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写真はアトピー肌のために浅黒い肌に対して冷却装置のない光脱毛機による施術を行なってヤケドし、その後に生じた色素沈着です。

皮膚表面のメラニン色素は表皮の最下層である基底層にある メラニン産生細胞でつくられて、その後に上層に移行してきます。最終的に角質層に上がってきて垢になって剥げ落ちるのですが、そのサイクルは約1ヶ月といわれています。
ヤケドしてバリヤーが破壊されると、紫外線から真皮層以下の組織を守ろうとしてメラニン産生細胞は通常よりも早いペースでメラニンを産生します。メラニン産生細胞で つくられたメラニンは正常ならば体表に向かって上がっていくのですが、一部は貪食細胞という細胞に飲み込まれて真皮層に脱落してしまいます。脱落したメラ ニンを含有した色素保有細胞は表皮の再生サイクルから取り残されていますので中々排出されません。これが炎症後色素沈着(シミ)なのです。
ヤケドが起きたときの対処法ですが、できるだけ早く治療を開始することが大切です。
治療の骨幹は副腎皮質ホルモン軟膏(ステロイド軟膏)の塗布です。また表皮の再生サイクルは約1ヶ月ですから、その間の紫外線対策を厳重に行なえば基底層は過剰にメラニンを生産せず、真皮層に脱落するメラニンも多くはないわけです。
不幸にして色素沈着が残ったときの治療ですが、ビタミンCの内服やイオン導入に加えてビタミンAの誘導体であるトレチノイン酸とハイドロキノンという美白 剤軟膏を使用することが一般的です。しかしトレチノイン酸は有効濃度に個人差がとても大きく、過剰投与になると皮膚が真っ赤になりボロボロと剥けてきます ので使いづらい薬です。フォトリボーン治療をトレチノイン酸に併用すると赤味を抑えることができ、従ってトレチノイン酸の濃度を上げることができますので当院では積極的に取り組んでいます。

ところがヤケド後に、逆に色素脱出(白斑)が生じることもあります。まったく逆の現象なのですが、理由を説明いたします。

冷却装置の内蔵されていない脱毛機では冷やしたジェルで皮膚を保護しながら照射するのですが、これはジェルの温度とヤケドの程度を調べた実験写真です。詳しくはこちらを御覧ください。


7ヶ月後の写真ですが色素沈着ではなく色素脱出となっています。

客として、あるいは患者として脱毛をお受けになっている皆さんには分からないでしょうが、この文章をお読みいただいているエステサロンやクリニックのス タッフの皆さんなら色素脱出が起きるヤケドは色素沈着が起きるヤケドよりもヤケドの度合が大きいことということを経験されているはずです。
比較的軽いヤケドの場合には基底層の裂け目からメラニンが脱落すると書きましたが、逆に言えば、脱落するだけのメラニンをメラニン産生細胞は作る能力を維持しているということになります。
メラニンを作れなくなるほどメラニン産生細胞が障害を受けると色素脱出が起きるのです。
ところで、尋常性白斑と呼ばれる原因不明の色素脱出があります。この病気の治療はとても難しいのが現実で、いちど起きると回復するにはとても時間がかかるのですが、その治療の中で比較的有効とされているものにNarrowband UVB療法という紫外線治療法があります。簡単にいえば残存するメラニン生成細胞を賦活させようというものです。311ナノメートルの中波長紫外線を発す る蛍光ランプを用いて照射を行いますが、完全に色素脱出していれば効果は低いですし、中波長紫外線そのものは身体に安全ではありませんので専門施設で慎重 に行なう必要があります。
幸いといいますか、レーザー脱毛や光脱毛によって生じた色素脱出はメラニン生成細胞が全滅しているわけではありませんので紫外線療法は有効な治療法といえます。Narrowband UVB療法のような特殊な専門治療でなくとも、街の日焼けサロンを利用するだけでも効果があります。ただし、皮膚全体が日焼けしてしまうと次回の脱毛施術で更なるヤケドが生じる危険性があります。色素脱出のない場分の日焼けは避けて脱毛は一時中止したほうがよいでしょう。

話をまとめます。
1) ヤケドが起きたらできるだけ早くステロイド軟膏等による治療を開始し、遮光などによって十分な紫外線対策をとる。
2) ヤケドが治って色素沈着がみられたら、ビタミンCの内服やイオン導入とともにトレチノイン酸・ハイドロキノン軟膏による治療を行なう。フォトリボーンを併用するとより効果的。
3) ヤケドが治って色素脱出がみられたら、逆に日焼けを試みる。

結局は、ヤケドをしないように皮膚冷却装置が内蔵された脱毛機で、あるいは冷却装置を後付けして、テスト照射を慎重に行ないながら施術することが大切であるという基本に戻ってしまいます。そのように慎重に行なって生じたヤケドは軽症なので色素沈着も脱出も起こしにくいですし、起したとしても早く回復します。

2004年8月2日
渋谷高橋医院 院長
高橋知之