光治療機「コスモライト(エリプス・フレックス)」について-グリッドスペーサーが不要な理由を考える-

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エステサロンで脱毛や美顔に使用されているコスモライトと、医療機関で使用されているエリプス・フレックスは同じハンドピースを採用した姉妹機です。いずれも、ハンドピースを皮膚に押しつけて光を照射するのでグリッドスペーサーが不要だとメーカーでは説明しています。不要である理由を私なりに考察してみました。

光脱毛機からでる光線はレーザーではなく、強力ではありますが普通の光です。レーザー光線は指向性のある直線光ですが光脱毛機からの光線は拡散光なの発光源から皮膚までの距離を常に一定に保つ必要があります。光のエネルギーは距離の2乗に反比例して減弱していきますので、近づけすぎればヤケドし、離しすぎれば効果がなくなってしまします。
また、皮膚表面の発熱を吸収させて表皮を保護するために照射口と皮膚の間に2ミリくらいの厚さで冷たいジェルを置くということも冷却装置がついていない脱毛機の場合には必要なことです。
光脱毛機でヤケド事故が多い理由は、この距離を施術中に一定に保つことの困難さによるのです。
それを解決するための方策がグリッドスペーサーで、すでに、病院仕様の美顔システムであるフォトフェイシャルやエステ用ではフィシオフラッシュという脱毛機で実用化されています。
コスモライトは冷却装置がないにもかかわらず冷却ジェルは不要で照射口を皮膚に接触させながら照射するという機械です。前々から不思議におもっておりましたところ販社の方から「自信があります。しばらくお預けしますので性能を検証してください」との御提案をいただきました。承諾しましたところ、メーカーであるデンマークのDDDという会社からApplicationSpecialistという肩書のPetersen氏がデンマーク大使館員を通訳に従えておみえになりました。2003年5月28日のことです。
冷却装置を使わずにハンドピースを皮膚に押しつけて永久脱毛できるのであればグリッドスペーサーというアイデアは不要になってしまいますのでとても興味深いミーティングでした。(その頃はまだ公にはしていませんでしたがグリッドスペーサーが完成間近だったのです)


Petersen氏によれば、コスモライトは第二世代のIPLであって、I2PLと呼ぶそうです。左は古くからある第一世代のエステライトとの照射面積を比較した写真です。面積が2.4倍ありますから施術時間が短くなるのは当然ですばらしいことです。
私が使用しているライトシェアという機械は接触式の冷却装置でヤケドを防いでいますから、すこしでも照射面が皮膚から離れるとヤケドしてしまいます。そのヤケドを防ぐ算段が「押す・拭く・ジェル」であります。
コスモライトが安全な理由は「ダブルフィルター」によるとPetersen氏は強調されます。
エステライトの場合には690ナノメートルよりも短い波長をカットするフィルターがついています。短い波長の光はメラニンにはよく吸収されますが皮膚の表面でそのエネルギーの大半が捕われてしまうのでヤケドしてしまうのです。そのヤケドの原因である波長をカットするのがフィルターの役目です。
したがってフィルターがカットする波長は長いほど(数字が大きいほど)安全なので、600ナノメートルのコスモライトよりもエステライトのほうが安全だということになります。一方、690よりも600の方がカットするエネルギー量が少なくて済みますから効率的といえます。安全をとるか効率をとるかということになるのですが、コスモライトの場合には950ナノメートルよりも長い波長をカットする第2フィルターをつけ、そのフィルターが皮膚の水分に吸収される波長をカットするために皮膚温があがらず、600フィルターでも安全に施術できるというのです。
さて実際に設定画面を見てみました。肌タイプ、日焼け度、毛質、という3条件を選べば推奨する標準出力が表示されます。便利です。肌タイプは1から5までありますのでフィッツパトリックの分類に従っているようです。上の画面写真の左を御覧ください。タイプ1で日焼なし、毛質が普通と選べば15Jという出力が標準とでてきます。フィッツパトリックの分類についてはこちらを御覧いただければよいかとおもいますが、多くの日本人は(私もそうですが)タイプ3です。タイプ3で日焼なし、腕の内側なので普通の毛質を選ぶと13Jが標準と表示されました。(写真中央)なお、同じ条件で選べる最高値は写真右のように20Jでした。
DDD社の方式どおりに皮膚に押しつけて標準出力と最高出力で照射してみました。標準出力ではたしかに痛みはありませんでしたが最高出力では痛そうなので毛の生えていないところに照射しました。左写真ですがそれでもとても痛かったです。実際の広範囲施術は無理だとおもいます。Petersen氏によれば「それはあくまで最高設定であって通常は使用しません」とのことでした。(右は第一世代のエステライト式に冷したジェルをつけて2ミリ離して照射してみました。これなら広範囲の施術も可能です)
ダブルフィルターの仕組みを更に聞きました。実際は2時間程度のミーティングでしたし資料も足りなかったりで、以後はメールのやりとりとなりました。私が知りたかったのはカットする前の光線の波長分布と2枚目のフィルターの構造です。光工学に詳しい知人が「長い方をカットするのって技術的にできるの?」というからです。このふたつの疑問の解明に取り組んでみました。

まず波長分布ですが、DDD社のHPに学術論文が載っていました。左図の上はその引用です。
赤い縦棒が950ナノメートルです。それより右側は、赤い矢印のように確かに分布は平坦になって有効にカットされているように見うけられます。でも、カットされる直前の890くらいから950までも分布曲線は右下がりでどんどんと減少しています。図の青い矢印です。すなわち、950のフィルターがなくっても、その附近で自然消滅してしまうように私には見えます。それをPetersen氏に指摘すると、「いや、この分布曲線はその後右上がりに移行していくのです」と言うのです・・・・。はっきり申しまして私にはにわかには信じられませんでした。
その後の何回かのやりとりで、新しいカットしないときの分布曲線を送っていただきました。
左図下で水色の部分がすでに公開されている分布曲線です。茶色の部分が950より長波長で第2フィルターでカットされるエネルギーだそうです。(たしかにちょっとだけ右上がりではありますが、私には茶色の部分の面積は水色の部分に比べてわずかのように見えます。
カットされるエネルギーはわずかですし、この波長域の光線は皮膚透過性がよいので、第2フィルターの存在が皮膚のヤケド防止に大きく貢献しているとはおもえないというのが、波長分布曲線を見ての私の見解です。
私は、これをもってしてコスモライトがヤケドしない(しにくい)機械であるという主張を否定しようというのではありません。本当にそのように安全な機械であるなら別の理由があるのではないかとおもうだけです。
つぎに第2フィルターの構造についてです。Petersen氏曰く、「とても簡単なことです。光源であるランプを酷使すると高温となり傷みますので、コスモライトではランプを水の中に漬して発光させています。ランプからでた光は冷却水をくぐり抜けてハンドピースの照射口に到達するわけです。ランプで発生した光は様々な波長の光の集合体です。その光が冷却水をくぐり抜ければ、当然、水に吸収される波長は照射口には到達しません。単純明快で確実な「水フィルター」といえます。なんというユニークな発想でしょう。

ここで少しばかり補足しておきます。左図は、コジワとり専用レーザーであるクールタッチのHPからの引用です。透明な水は可視光線をあまり吸収しませんが、波長が950ナノメートルより長くなると吸収率があがってきます。それでコスモライトの「水フィルター」は950よりも長い波長をカットすると言っているわけなのです。とても論理的です。ちなみにクールタッチは1320をだすレーザーで、水分への吸収がとてもよいことがわかります。真皮層の水分にエネルギーを集めてコラーゲンの増成をはかりコジワをとろうとするものです。(してみると、目的は違うのでかまわないのですが、コスモライトでコジワをとることはできないということになります)

さて、ここまでのまとめです。
1)第ニ世代であるコスモライトはヤケドしない(しにくい)。
2)その理由は長波長をカットするフィルターがあるからである。(私はカットすることに意味があるほどの長波長の光はそもそも存在しないのではないかとはおもう)
第一世代であるエステライトについては、たしかに 690のフィルターがついているだけでコスモライトのような第2フィルターは内蔵されていません。しかし、エステライトのフィルターはDDD社が言うようにひとつだけなのでしょうか??
私は考えました。

エステライトのオリジナルな使用法は照射口を皮膚科から2ミリほど離して、その隙間に冷した透明のジェルを置くというものです。透明のジェルのおよそ90%は水なのです。賢明な皆さんはお気づきになられたことでしょう。エステライトも実は950以上をカットする厚さ2ミリの外付け第2フィルターを使用していたのです。
両者ともに第2フィルターがついているという認識で再考しましょう。第1フィルターだけをみればコスモライトは600でエステライトは690です。理論的にはコスモライトの600のほうが冷却装置もついていませんし遥かに危険です。
レーザー脱毛なり光脱毛で効果と副作用を左右する因子には波長や冷却装置の他に出力とパルス幅(光線1発の持続時間)があります。コスモライトが安全であるとすれば、フィルターではなく出力とパルス幅にその理由があるはずです。

すでに書きましたがコスモライトは、5段階の肌タイプ、5段階の日焼け度、3段階の毛質、から適当な条件をタッチパネルで選べば推奨の標準出力が表示されます。組み合わせ総数は90にもおよびます。
そのおのおのに推奨標準出力が表示されるのですが個々の設定でパルス幅がどのような値であるのかは不明で、Petersen氏も説明してくださいませんでしたので「BlackBox」なわけです。
パルス幅と出力に安全の秘密が隠されているところまでは解ったのですが、それ以上は検証が進まずしばらく放置しておりました。

その後、別の実験でパルス幅を測定する機械を借り入れましたので余った時間でコスモライトを測定してみました。(この実験については近々発表いたします。面白い企画となりそうです)
何十回も設定をかえて測定した結果を言えば、「肌タイプ」と「日焼け度」の組み合わせは推奨標準値を指定するだけでパルス幅は変化しませんでした。
パルス幅をかえるのは毛質の設定だけで、すなわち、細い毛は1000分の18秒(18ms)、普通の毛は25ms、太い毛は49msに設定されていました。所々で1.5〜2.0msだけ出力が落ちていますが、このような光の出し方をトレインパルスといいます。列車の連結部分のようにみえるからです。パルス幅が18ms〜49msというのは脱毛の原理にとても忠実です。安全性の秘密はこのあたりにあるのかもしれません。
とにかく、出力とパルス幅の関係がわかりました。
細い毛(パルス幅18ms)の場合では最高出力は17.5J/cm2までだすことができる。なお、推奨標準出力は肌質と日焼の度合によって8.5J/cm2〜13.0J/cm2である。
普通の(パルス幅25ms)の場合では最高出力は20.0J/cm2までだすことができる。なお、推奨標準出力は肌質と日焼の度合によって9.5J/cm2〜15.0J/cm2である。
太い毛の(パルス幅49ms)の場合では最高出力は21.0J/cm2までだすことができる。なお、推奨標準出力は肌質と日焼の度合によって9.5J/cm2〜15.0J/cm2である。
標準値で施術するのが原則のようで、手動的に上の写真のように出力を変化させようとすると、「変更してよろしいか?」という意味合いで承認ボタンを押すことが要求されます。とても安全に配慮したプログラムです。
機械の操作パネルで表示される説明文によると、太い毛とはワキ・ビキニや男性のヒゲくらい、細い毛とは女性の上唇くらい、普通の毛とは腕や足・背中などの毛だそうです。
私のスネ毛の場合は「太」で肌質はタイプ3、日焼けなしです。DDD社の推奨標準出力は13Jです。痛みはわずかで脱毛できたかどうか確信がありませんでしたので、上の右側写真のような手製のグリッドスペーサーをつくって最高出力である21Jで照射してみました。痛みは同じ程度でした。(照射風景はこちらのビデオで御覧ください)
上の左側写真は照射して15分後ですが、グリッドスペーサーの方はきちんと反応していますが標準設定のほうは「?」です。
女性の上唇に生えている細い毛について言えば、私の経験からすればパルス幅30ms・出力60J/cm2で行なって脱毛できるかどうかといったところですから、18msの最高出力17.5J/cm2であっても脱毛は難しいと考えます。実際に照射してみましたが、照射後に皮膚の変化はまったく認められませんでした。
脱毛できないのであれば毛質によってパルス幅を使いわけても無意味としか言いようがありません。せっかく18ms・25ms・49msと3タイプ用意しているのですから、毛質ではなく「色黒度」によって使いわけるほうが為になるとおもいます。色黒な人ではヤケドしたけれども脱毛はできなかったということはありうるのです。
フィッツパトリックの肌質分類は紫外線感受性に重きをおいてなされたものですから、今まさに照射しようとしている際の指標にはあまり役立たないというのが私の意見ですが、難しく考える必要はないのです。
毛質にかかわらず色白の人を脱毛する際には18ms(細い毛)、色黒だと49ms(太い毛)、一般には25ms(普通の毛)の設定を選ぶというのが合理的です。その理論的根拠は再度こちらを御覧ください。そのように私は専門家として提言いたします。
さて、そろそろ結論が見えてきました。
コスモライトが安全であるのは推奨標準設定で照射したときであって、標準設定より強く照射する際にはやはり痛いですので何らかの対策が必要ではないかとおもいます。しかし、絶対に必要かと聞かれれば、絶対にではなく望ましいということになります。といいますのはレーザー脱毛でも会社によっては18〜20Jくらいまではどうにか冷却装置がなくてもしのいでいるのが現状だからです。そのあたりの詳しい説明はこちらを御覧ください。

この機械がグリッドスペーサーを必要としないというのであれば、それはダブルフィルターのせいではなく最強出力が21Jまでだからだとおもいます。
シングルフィルターのエステライトと比較するのはおかしいというのであれば、グリッドスペーサーを必要とするフィシオフラッシュを引き合いにだしましょう。フィシオフラッシュはこちらのページで詳しく検証しております。
エステライトのメーカーと同じく、フィシオフラッシュのメーカーはシングルフィルターと認識していて、使用する冷却ジェルが外付けの第2フィルターの役割を果たしているわけですが、実はそれだけではないのです。
左側写真はコスモライトのランプ冷却水の循環チューブです。右側写真はフィシオフラッシュのハンドピースですが御覧のAおよびBは、同じくランプの冷却水用の循環チューブです。そうなのです。フィシオフラッシュはコスモライトと全く同じ第2フィルターを内蔵しているのもかかわらずグリッドスペーサーが必要なのです。なぜでしょう。

私はフィルターカットする波長に関係があるのではないかと考えます。
フィシオフラッシュが550ナノメートル以下をカットするのに対して、フィシオフラッシュは600以下をカットしています。カットする波長が短かければ短かいほど(図の左に寄れば寄るほど)光は皮膚表面で捕われやすくなります。すなわちヤケドしやすくなるのです。コスモライトで冷却ジェルが不要な出力であってもフィシオフラッシュでは必要であるということは理にかなっているのです。

では、この検証の結論をだしましょう。
1)コスモライトは機械画面に表示された手順で操作すれば簡単に推奨標準出力を設定できます。その設定どおりに施術するかぎりにおいては、とても安全で冷却ジェルもグリッドスペーサーも不要です。
2)推奨標準設定よりも強く照射する際にはグリッドスペーサーはあったほうがよいけれども必須というものでもなく、肌の色黒度に応じて18ms・25ms・49msを使いわけながら使用すれば大きなヤケドは起こらないと考えられる。

以上ですが、この検証は光脱毛に限定したものです。550ナノメートル以下をカットするフィルターを用いた光美顔術(フォトエステ)に関する検証についてはこちらを御覧ください。

2003年8月10日
文責者:渋谷高橋医院院長高橋知之(E-mail:Tomoyuki@Takahashi.MD)

2003年10月30日
本ページの続編として光治療機コスモライト(エリプス・フレックス)について-グリッドスペーサーによる安全性の向上-というページをつくりましたので御覧ください。

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ただし本文の一部を抜粋して引用あるいは配布することは文責者の許諾を得てください。