Q:ダイオードタイプの脱毛はレンズ面が接触し、しかも精密機械であるため消毒ができず深剃りをした複数の患者さんに使うというのはエイズなどの感染症を引き起こす可能性があるので使っていないと言う医院がホームページ上でありました。そちらの医院ではどのような対策をとられているのですか?
A:脱毛用レーザー装置には照射面が皮膚に接触するタイプと接触しないタイプがあります。ホームページの本文で詳しく説明しているのでお分かりかとおもいますが、効果と副作用の両面で(非接触式の代表選手であるLPIRを廃棄したほど)接触式が圧倒的優位にあります。
そうはいっても肝炎やエイズに感染したのでは大変なことです。
接触式は皮膚に接触するので感染症の危険があり非接触式は皮膚に接触しないので安全であるという話は一聞すると説得力がありますが真実ではありません。非接触式というのは、レーザー光線の出口が皮膚に接触していないという意味であって、どこか他の部位は接触させざるをえないのです。
皮膚面が受けるレーザー光線の強さが常に一定であるためには、非接触式の脱毛機では、レーザー光線の出口と皮膚の距離は常に一定でなければなりません。一定に保つために、照射口は皮膚から離れていても、ハンドピースのどこかの部分は距離を一定に保つガイドとして皮膚に接触させておく必要があります。例えば、Candela Laser ホームページ(海外)(詳細はパソコン版Q&Aページをご覧下さい)を御覧ください。レーザー光線の出口は皮膚から離れていますがハンドピースそのものは皮膚に接触しています。ですから、接触している部分が感染源になる可能性があるとすれば、非接触式であっても接触式であってもリスクは変わらないのです。
私たちが使用しているダイオード装置 Coherent社のLightSheerは接触式ですからレーザー光線の出口であるサファイアガラスは常に皮膚に接触しています。
ところで、レーザーが照射された瞬間に毛根は爆発的に燃焼するわけですが、発生した高熱は接触しているサファイアガラスにも伝わります。爆発的燃焼とは言葉通りです。照射を受けた人ならお分かりでしょうが、ワキのような太い毛を処置すると「毛を燃やしたときの嫌な臭い」が周辺に漂います。すなわち皮膚面とサファイアガラス面を同時に熱消毒しながら処置をおこなっているともいえるわけです。
非接触式脱毛機でも爆発的燃焼が起きますから皮膚面の熱消毒はおこなわれていることになりますが、皮膚に接触するガイド部分は LightSheerの接触部のような熱消毒を受けませんので、かえって危険ではないかとも考えられます。
もうひとつの接触式脱毛機であるPalomar社のSLPではどうでしょうか。ダイオードレーザーにおける照射時間と冷却時間(詳細はパソコン版Q&Aページをご覧下さい)で判るように、サファイアガラスよりも広い面積の冷却部が常に皮膚に接触しています。この冷却部はサファイアガラスから完全に独立していますから毛根が爆発的燃焼を起こしたとしても、非接触式脱毛機のガイド部分と同じく熱消毒を受けません。「爆発的燃焼を起こしたとしても」とわざわざ書いたのは、SLPは爆発的燃焼を起こさないからです。
SLPの設計思想は「毛包にある毛の発生工場(幹細胞)は70度くらいで不可逆性の変化を起こすので、その程度の熱量しか与えない」というものです。もし、ハンドピースに肝炎ウィルスが付着したまま次の人の処置をおこなってしまったとします。設計思想通りに比較的低温で脱毛できたとして、毛包にまぎれ込んだ肝炎ウィルスは死にません。肝炎ウィルスは100度の煮沸消毒でも死滅しなないからです。
すなわち、SLPではハンドピース側も皮膚側もどちらも熱消毒を受けないということなのです。
結論しますと、接触式のCoherent社のLightSheerが数ある脱毛機の中で感染源になりにくいということです。
もちろん、使用する度に消毒することは当然のことです。
レーザー脱毛機も含めて、すべての医療器具は、使用するたびに完全滅菌できれば問題ないのですが、現実には滅菌するのが難しいものもたくさんあります。代表選手が消化管の内視鏡です。大腸の内視鏡は肛門から挿入するのですから不安は脱毛機どころではありません。大病院では毎日数十例もの検査をおこなっていますが患者さんの数だけ機械を揃えてはいないのが普通です。
そのような機械の消毒には「グルタルアルデヒド」という薬剤を使うのが一般的です。肝炎やエイズウィルスを含めて(ほぼ)すべての細菌やウィルスに効くと考えられています。
私たちが使っている脱毛機は感染症の危険がもっとも少ない機種であると考えておりますが、この薬剤で接触面を消毒することにしております。
「グルタルアルデヒド」を使用すれば、それでよいとは考えておりません。ピアス穿孔機が「ピアスガン」から私(Dr高橋)の考案した「ピアッサー」に移行しているように、ディスポーザブル(使い捨て)化は世の流れです。
脱毛機でも、そうあるべきだと私は考えます。メーカーの努力を期待してやみません。
2001年3月3日
渋谷高橋医院 院長 高橋知之